元数学教員・奉孝先生の「数学の欠点9割脱出法」

数学がすごく苦手だという高校生に、少しでもテストで点を取れる喜びを味わってほしいと始めました

傾きの数字は何を表しているか

 ここ何日か絶対値の話をしてきましたが、今回の話や、今後2次関数が出てきたときの話に使いたかったので遠回りしました。流れを切ってすみません。

 では、今日のテーマ、傾きの数字とグラフの関係についてです。

 まずは、次の図を見てください。

  

 赤・青・緑の直線のグラフを比べると、傾きの値の大きい(2→1→1/2)順に直線の傾きが大きく(急に)なっていることが分かると思います。坂をイメージすると分かりやすいかもしれません。

 ところで、傾きの比較ではy切片は関係ありません。次の図のように、y切片が変化しても、傾きにあたる部分の数字(y=ax+bのaのとこです)が同じなら、傾きは同じですので、上の図ではすべてy切片を0の式にしています。(なお、この考え方は数学Ⅱの直線の方程式という単元で出てきます)

  

 

 では、傾きが負、-のときはどうでしょうか。次の図を見てください。

  

 今度は、傾きの値が小さいほど(ー2→ー1→-1/2)傾きが大きい(急)であることが分かります。

 ここで、絶対値を使って表してみましょう。

 赤・青・緑の傾きの絶対値は、それぞれ2・1・1/2です。

 すると、傾きが+だったときと合わせると、

 傾きの絶対値が大きいほど、直線の傾きは大きい(急)

 であることが分かります。

 こういうときに絶対値は便利です。

 ところで、この直線の傾きの考え方を実生活で生かしている例があります。

 それは、列車のダイヤグラム。時刻表です。

 特急列車や普通列車など、列車が出せる速度は決まっているので、それ以上の速度にならないよう(傾き)を調整して、直線を引いたものがダイヤグラムになります。

 機会があれば、ダイヤグラムの考え方を話せたらいいと思います。もっとも、本物のダイヤグラムを手に入れるには、鉄道イベントとかで買わないといけないので、この話ができるかどうかは分かりません。

 今日は、傾きの絶対値が大きいほど、傾きは急。ということを知っていただけたらと思います。

 

|〇-△|形の絶対値

 前回学んだ√のついた数の大小が求められれば、絶対値の中身が簡単に計算できないものでも絶対値をはずすことができます。次のような問題ですね。

   

 この問題の答は最後に書くので、まずは、この問題を解くための理屈から確認します。2つの数の比較と引いた時の符号の関係です。

 大-小>0(+)小-大<0(-)

 数字の例でみてみます。5-3は前の数字5のほうが後の数字3より大きいです。

 ですので、大-小の形になるので5-3>0、+となります。5-3=2と計算する必要はありません。

 また、3-5の場合だと、小-大の形になるので3-5<0、-となります。

 そして、絶対値の中身の符号が分かれば、+ならそのままはずす、-なら-( )つけてはずす。のルールに従えばよいです。念のため、絶対値のはずし方のルールを式で表したものを書いておきます。

  

 ですので、最初のような問題|〇-△|形の絶対値をはずすには、

 ① 〇(前)と△(後)の大小関係を調べる

 ② 〇>△なら、〇-△>0、〇<△なら〇-△<0として、絶対値の中にある式の

  符号を決める

 ③ 絶対値をはずすルールに従ってはずす

 の流れでやればよいです。では、教科書あるいは授業で買っている問題集に出やすいケースを取り上げてみましょう。2問、答とともに簡単な解説もつけて示します。

  

 √以外の無理数で取り上げられるπ(円周率)を使った例です。

 前の数字3と、後の数字πを比べて、πのほうが大きい、小-大となるから絶対値の中身は-、つまり-( )つけてはずす、という流れです。

 テストでは一番下の行だけでも問題ないと思います。ただ、板書(問題当てられて、黒板・ホワイトボードに解答を書けと言われること)の場合は理由を説明できるようにしておいてくださいね。そうしないと教員から「答(または友達のノート)写しただけだろ」と詰め寄られる事態になりかねません。何事も理論武装、もとい、エビデンス(根拠)は大事なのです。では、もう一例。

  

 これも、前の数1と、後の数√3の大小を比較して、小-大になったから以下…の形ですね。なお、√3=1.732…とだいたいの値を示す方法もありますが、その値がわからなくても対応できるような解答を今回示しました。

 テストに出題される場合、2つの数の大小を比較して、大-小か小-大かが分かり、絶対値の中身が+か-を判断して、(特に-のケースで)はずせるかを狙いにしていることが多いです。なので、この手のパターンは…ですね。

 では、最後に最初の例題の答を示してこのテーマの結びとします。

  

 

 

√のついた数の大小

 これまで、絶対値の値や絶対値を含む式の計算をしてきました。

 例えば、|3-5|などのようなものです。

 この例は、絶対値の中身が容易に計算できるものでしたが、次のような例だとどうでしょう。

  

 √2の大体の値は知っていても正確な値は分からないし、かけ算の結果、誤差が出て…などとなると面倒ですね。

 そういうときのために、√のついた数の大小を知る方法を学んでおくと便利です。

 また、今回はこの考えを使って解ける問題も紹介しているので参考にしてください。

 まず、√の数の大小について、基本的なルールがあります。それが次です。

  

 言われてみれば、そりゃそうだとなると思います。

 √2と√3の大小は、√の中身を比べると3のほうが2より大きいので、√3のほうが大きいということになります。もともとは、√を2乗すると√がはずれるという平方根の性質を利用したものになります。この性質を一般化したものが次の性質です。

  

 2つの正の数の大小関係は、2乗しても変わらないというものです。(数学Ⅱではこれを使った証明があります)注意点は、ともに+の数でないと、2乗して大小を比べることはできません。(アンダーラインのところです)

 片方が+、もう片方が-の場合、例えば、ー3<2は成り立ちますが、ともに2乗すると、(-3)×(-3)=9,2×2=4で9>4となり大小関係が変わります。

 √の数の中身を大小を見ればよい。という一見簡単なことでも、大切な条件が含まれていることに心を配れると、今後の学習に生かせそうです。

 では、少し複雑な大小比較の例を2つあげます。まずは、整数と√のついた数の比較からです。

 

 それぞれ2乗するという方法もあります。それぞれ2乗したら、4と3なので。(むしろそう教える教員のほうが多いかもしれません)√の中身で比較するという方針で説明しました。同じものを2つかけて√をかぶせたら直せますね。では、次の例です。

 

 一般的に、√の中身はできるだけ小さくする。というのが原則です。ですが、この場合だけは、整数の部分を√に直すという方法をとります。直し方は、特に赤文字のところに注意すればできます。もちろん、それぞれ2乗するという方法もあります。

 ともに√の数にして比較するという感覚はつかめたでしょうか。

 最後に応用例を紹介します。次のようなときに使えます。

  

 不等式を満たす範囲に整数は何個あるか、最大(最小)の整数はいくらか。というのは、わりと聞かれやすい問題です。最大何個までいけるかなど一般生活と組み合わせやすいからです。

 この問題の要点としては、√5<a<√20となったので、√5から√20のうち、整数に直る√〇はいくつあるかを答えたということになります。

 こういう問題のときは2乗するより、√で処理したほうがイメージがつきやすいのではと思います。

 今回は特に、〇√△の形を、√□に直すやり方を知っていただけたらと思います。

 最初に出した絶対値の直し方は次回に。

 

絶対値(2)・注意したい計算

 絶対値の計算で、違いを理解すれば得点しやすい問題の紹介です。

 教員によっては、生徒に点をとらせるために出題することもあるので(自分も出題したことあります)覚えて損はないと思います。

 問題を解く前に、絶対値のはずし方を具体的な例で復習しましょう。

 

 絶対値の中身の符号によって、そのままはずすか、ー( )つけてはずすかが変わるので、まず絶対値の中身の符号を確認しましょう。では、今回の計算です。

 

 (1) |ー5|+|3| (2) |ー5+3|

 

 使われている数字は同じですが、計算方法は違います。さっそく見てみましょう。

  

 大事な点は、|〇〇|の〇〇部分ごとにはずすということです。

 (1)は、|-5|と|3|をそれぞれ絶対値をはずして、その後計算

 (2)は、絶対値の中身、ー5+3を計算して|-2|にしてから絶対値をはずします。この違いだけ気をつければよいです。

 注意点は、単純に|a|+|b|=|a+b|とならないことです。

 なお、|a+b|≦|a|+|b|は成り立ちます。詳しくは数学Ⅱで学びます。

 では、練習問題です。どのタイミングで絶対値をはずすかに気をつけて計算しましょう。

 (練習問題) 次の計算をしなさい。

 

 (解)

 

 





 

 

 

絶対値(1)・定義と基本形

 ここ最近、ずっと関数の話をしてきました。

 ところが、今後グラフに関する説明をするとき、絶対値の概念があったほうが便利なので、絶対値の話をしておきたいと思います。

 (と言うのは言い訳で、教科書に書いてあります。私の説明不足です。すみません)

 

 まず、絶対値の定義からしておきます。定義は大事ですね。

  

 「なんじゃこりゃ?」と思った人も多いでしょう。

 おさえておくところは、アンダーラインを引いている「原点からの距離」というところと、記号| | です。それを踏まえて具体例でやってみましょう。

 まずは絶対値3、式で表すと|3|からです。定義にあわせて図示してみます。

    

 原点から座標がである点までの距離が||です。

 これは図より明らかに3ですね。

 ですので、||の値は3、すなわち、||=3です。

 その他、|2|=2、|5|=5、|1.5|=1.5など、||(←絶対値記号と呼びます)の中身の数字が+のときは、中身の数字をそのまま答えればよいです。

 これを式に表すと、a≧0のとき、|a|=aとなります。(①とします)

 

 では、絶対値記号の中身が-のとき、例えば、|-2|のときはどうでしょう。

 これも図を用いながら、定義通りやっていきます。

   

 原点とー2を示す点がどれだけ離れているか(距離)をみます。

 すると2離れていることが分かります。

 ですので、|ー|=と求められます。

 ピンと来た人は、絶対値記号の中身が-だと、-とって答えたらいいと飛びつきたくなりますね。

 しかしそれは最終手段として、絶対値記号の中身が単純な負の数のときだけにしてください。定義をしっかりと覚えてください。

 もう一度、|ー|=の結果を考察してみましょう。

 すると、絶対値記号の中身が-のとき(ー2)、絶対値の値は2(+)となり、符号が逆になっている。つまり、-をつけていることが分かります。きちんと書けば

 |ー2|=(ー2)=2 となります。

 他の例では、|ー4|=(ー4)=4,|ー0.5|=(ー0.5)=0.5 などです。

 絶対値記号の中身が-のときは、きっちりと上の形を覚えたほうが後々役立ちます。

 これを一般的な形で表します。

 a<0のとき、|a|=-aとなります。(②とします) 

 では、①・②のパターンを合わせて、|a|の値の定義をしましょう。

   

 このように、絶対値は絶対値記号内の数字の符号によって、答のパターンが変わります。状況を分けなくてはいけません。これを、場合分けをするといいます。

 高校数学では、この場合分けがスムーズにいくほどテストの点は格段に上がります。

 とりあえずは、この絶対値の値が計算できることを目標にしてください。

 最後に、絶対値の値は必ず0以上(基本的には+と考えてよい)です。-には絶対になりません。定義域の定義が原点からの距離だからです。距離は-にはなりませんね。

 0となるのは、|0|=0のときだけです。

 では、久しぶりの練習問題です。絶対値の値を求める練習です。

 なお、(3)・(4)については、解答を定義通りに載せておきます。

 答だけはさっと出せるかもしれませんが、後につなげるという意味でみておいてください。

 (練習問題) 次の絶対値の値を求めなさい。 

 

 (解)