元数学教員・奉孝先生の「数学の欠点9割脱出法」

数学がすごく苦手だという高校生に、少しでもテストで点を取れる喜びを味わってほしいと始めました

必要条件・十分条件の身近な使用例(1)・スポーツ

 今日から新しい内容、「必要条件・十分条件」について学びます。

 この内容は入試、特にセンター試験(現共通テスト)に必ずと言ってよいほど出題され、正解するにはそこそこ手順を踏んで各ステップをクリアしなくてはならないので、最近言われるコスパ・タイパが悪く(解答に時間がかかる割に得られる得点が低い)、そのくせ、答えは必ず4択なのででたらめに書いても正解率25%ということもあり、(4択の理由は別の日に書きます)私が現役教員のときは、この問題は最後に回して、取れる問題を先解きなさいと指導していました。

 しかし、この必要条件・十分条件という言葉やその意味合いは、日常生活でも割と使われます。次の表を見てください。

   

 この表は、2022年のサッカー J1 リーグの最終戦が始まる前時点での、優勝を争う2チームの勝ち点です。(チームをA,Bと隠しても分かる人には分かりますが)

 サッカーの勝ち点は、勝てば3、引き分ければ1もらえますが、負ければ0です。

 優勝の条件をBチームの立場で見てみます。

 Bチームが優勝するには、勝利が絶対条件です。

 引き分けや負けですと勝ち点は66あるいは65なので、その時点でAチームの結果がどうであっても優勝の可能性はなくなります。

 しかも、仮にBチームが勝ったとしても、Aチームが勝ったその瞬間、Bチームが優勝することはできなくなります。(Aの勝ち点70、Bの勝ち点68のため)

 つまり、Bチームは勝ったうえで、Aチームの負けを願うしかありません。サポーターが自分のチームの応援をしつつ、スマホで他会場の結果を見ながら「負けろ」と怨念を送るようなものです。これを他力と言います。(他力本願という言葉もありますね)

 また、この状況のことを、Bチームが勝利することは、Bチームが優勝するための必要条件という言い方をします。条件を満たすために最低限必要という意味合いです。

 今度はAチームの立場で見てみましょう。

 Aチームは勝ちさえすれば、Bチームの結果に関係なく優勝することができます。これを自力と言います。

 また、この状況のことを、Aチームが勝利することは、Aチームが優勝するための十分条件という言い方をします。条件を満たすにはこれで十分という意味合いです。

 ところで、最終戦の結果はどうだったかというと、勝つしかなかったBチームが負けてしまい、Aチームは勝って、Aチームが優勝しました。もっとも、勝負の世界では条件がいいほうがひっくり返されるというケースも結構あるようです。

 また、野球では、優勝マジック○という言い方をします。これも、必要条件・十分条件の考え方が使われています。マジックが点灯したチームは、他のチームの結果に関係なく○勝したら優勝できる、十分条件として用いられます。それ以外のチームは、自分のチームが残り全勝しても、マジック点灯チームが○勝すると優勝できなくなる他力ということになります。マジック消滅というのは、マジック点灯チームが負けて他のチームに自力優勝の可能性が出てきたときにおこります。

 スポーツの例を通して、必要条件・十分条件のイメージは何となく見えてきたでしょうか。また違った例で説明したいと思います。